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潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis{あるされいてぃぶ こらいてぃす}通称UC)。クローン氏病(CD)とともに炎症性腸疾患(IBD)に含まれます。大腸の粘膜だけで炎症を起こす原因不明の病気で、びらんや潰瘍ができます。体の免疫機能に関係があり、白血球が自分の大腸粘膜を攻撃して潰瘍ができて出血します。「自己免疫異常」の他に「遺伝的素因」やストレス・欧米的な食生活など「環境」に関係があるとされていますが、詳しくは解っていません。基本的に遺伝病ではありませんが、親子や兄弟で発症した方もまれに居ます。
潰瘍性大腸炎は原因不明で完治させる事ができないため、症状を抑える事しかできず、症状が出ていない「緩解」{かんかい}と炎症が始まった「再燃」を繰り返します。原因不明で治らない為に1973年「特定疾患」いわゆる難病指定にされました。もともとは欧米で多い病気でしたが、最近日本でも急増してきた病気で、20才前後が最も発病しやすく(2才以下〜70才以上の発症が確認)、60才前後が2回目のピークです(1回目よりは小さいピーク)。発症10年以上、30代以上で症状が落ち着いてくる場合もあるようです。
潰瘍性大腸炎の発病率は10万人に1.95人、実際の患者数(有病率)は10万人あたり30人程、推定患者数は8万人以上(2005厚生労働省調べ)。全大腸型で長らく患うと大腸癌を起しやすいと言われています。(10年で1-2%、15年3%、20年2-8%、25年4-12%。一般の発生率は0.3%)炎症部分が広い方が癌化しやすく、癌化しても潰瘍や炎症の治りかけや治った跡と見分けが付き難い場合があるので、潰瘍性大腸炎発症10年以上では年に一度は大腸癌のサーベイランス検査をする方が良いでしょう。
潰瘍性大腸炎の主な症状
下痢・粘血便(血の混ざった軟便)・腹痛・しぶり腹(便が出そうで出ない)・微熱が続き、悪くなると下血します。大腸粘膜から粘液が多く分泌されるので透明な粘液が便の代わりに出たりします。酷くなると1日に20回以上もトイレに行かなくてはならない状況になります。普通は潰瘍性大腸炎自体で死ぬ事は無いのですが(死亡率は普通の人と変わりません)、稀に腸が破れての出血多量や薬の副作用などで亡くなる場合もあります。
潰瘍性大腸炎と診断がつくには
内視鏡やバリウムによる透視検査で炎症や潰瘍の広がり具合を確認し、血液検査・組織検査・便培養などで、その他の疾患(細菌性赤痢、サルモネラ腸炎、大腸結核、クローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、虚血性大腸炎など)をすべてを否定して初めて診断がつきます。原因となる細菌や特異な細胞が見つかるワケでは無く、消去法で診断をつけるので、症状や検査結果や医師の経験によっては、なかなか診断が確定しない場合があります。ずっと過敏性腸症候群と診断されていたり、クローン病と言われていたが後で診断が変わる患者さん(その逆も有り)も結構居たりします。
潰瘍性大腸炎の「緩解」「再燃」のサイクル
潰瘍性大腸炎の緩解・再燃のサイクルは数ヶ月〜数年と個人によってバラバラです。10年以上緩解していて『もう治った』と思っていたのに再燃する人も居ます。仕事、出産、環境の変化、食事や風邪が引き金になって再燃する事が多いです。秋から冬に再燃することが多いというデータも。
潰瘍性大腸炎は大きく分けて4タイプに分類されます
「再燃緩解型」(43.1%) 何度も緩解再燃を繰り返す
「初回発作型」(42.69%) 最初に発症したきり、その後再燃しない
「慢性持続型」(16.7%) 6ヶ月以上緩解せず下血が続く
「急性電撃型」(1.7%) 急激に悪くなり症状ももっとも悪くなる
慢性持続型と急性電撃型は手術適応になることが多いです。
潰瘍性大腸炎の炎症範囲
潰瘍性大腸炎は炎症の出る場所によっても分類されます。一般的には炎症範囲の広い方が重症度が高いです。
「直腸炎型」 直腸にだけ炎症や潰瘍ができる
「左側大腸炎型」 直腸・S状結腸・下行結腸・横行結腸より左側の大腸に炎症や潰瘍が出る
「全大腸炎型」 横行結腸より右側の上行結腸にも炎症や潰瘍が広がっている
「区域性大腸炎型」 部分的に飛び飛びに炎症や潰瘍が出る
潰瘍性大腸炎の重症度
1.下痢 便回数が1日6回以上2.あきらかな血便
3.熱が37.5℃以上
4.脈拍が1分間に90回以上
5.ヘモグロビンが10g/dl以下
6.血液沈降速度BSRが30mm/hr以上
このうち1・2があって、3〜6の項目のうち二つが該当すれば重症。1〜6に一つも該当しなければ軽症。重症と軽症の間が中等症。重症より悪いと激症です。重症度によって特定疾患需給のランク付けが変わったりします。(軽症の場合は特定疾患が貰えない場合があるので要注意)
潰瘍性大腸炎の合併症
潰瘍性大腸炎のおもな症状である大腸の炎症以外に合併症を併発する場合があります。
潰瘍性大腸炎の腸管合併症
- 狭窄(きょうさく):大腸が細くなる。
- 瘻孔(ろうこう):腸と腸、膀胱、膣、皮膚などに穴がトンネル状に通じる。
- 穿孔(せんこう):強い炎症の為に腸に穴が開く。
- 中毒性巨大結腸症:大腸がパンパンに腫れ、毒素が全身に回る。
- 大腸の鉛管化:何度も再燃したり深い潰瘍ができた為に大腸が固く繊維化する。
潰瘍性大腸炎の腸管外合併症
- アフタ性口内炎:口内炎の事です。
- 虹彩炎(ぶどう膜炎):黒目に炎症が出る。最悪の場合は失明。
- 壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう):皮膚潰瘍。皮膚が脱落して膿が溜まり、穴があく。
- 結節性紅斑(けっせつせいこうはん):赤い斑点が下肢にでる。関節痛や発熱も。
- 関節痛:関節に炎症が出る。ステロイドの副作用の場合も。
- その他:小水疱皮疹、膵炎、肝機能障害(脂肪肝・胆管周囲炎・肝硬変)、血栓性静脈炎、側頭動脈炎、脳血栓、肺血栓、脳梗塞、甲状腺腫瘍、尿路結石など。
合併症によっては外科手術が必要です。
潰瘍性大腸炎の治療法
潰瘍性大腸炎の内科治療
潰瘍性大腸炎の内科治療は絶食や食事療法で大腸を安静にして、5ASA製剤かステロイド剤を中心に炎症を抑える治療が基本です。
- 5-ASA製剤(サラゾピリン・ペンタサ)
- 副腎皮質ステロイド剤(プレドニン・ステロネマ・パルス療法)
- 白血球(顆粒球)除去療法(LCAP・GCAP)
- 免疫抑制剤(イムラン・ロイケリン・シクロスポリン)
- 漢方薬(紫苓湯・大建中湯・紫胡桂枝湯・広島観音クリニック)
- ATM療法(抗菌剤多剤併用療法)
潰瘍性大腸炎の外科治療
潰瘍性大腸炎は大腸の一部分だけを手術で切除しても、残った部分にまた潰瘍ができるので、大腸全てを切除する事が必要です。全摘後は、人工肛門を作ったり、直腸の代わりに小腸でJポーチを作ります。
- 永久回腸人工肛門
- 回腸直腸吻合術(IRA)
- 回腸嚢肛門管吻合術(IACA)
- 直腸粘膜切除・回腸嚢肛門吻合術(IAA)
- 終末回腸口側移動法(TITP)
- 腹腔鏡下手術
潰瘍性大腸炎はどこで診てもらうか?
潰瘍性大腸炎の内科治療は市や区の総合病院程度でも十分に診察可能ですが、なるべく潰瘍性大腸炎の診察経験の豊富な医師にかかる事が重要です。基本的な治療はサラゾピリン・ペンタサ・ステロイドで行うのですが、これらはどこの病院でも処方可能です。白血球除去療法は人工透析ができる病院であれば技術的には治療可能です。ATM療法などの治験中の治療は一部の病院でしかできません。
潰瘍性大腸炎の外科手術は非常に難易度が高いので、命に関わる緊急手術以外は専門外科病院(三重大病院・兵庫医大病院・横浜市民病院)で手術を受けるのが良いでしょう。