東京読売朝刊 2002年4月28日
骨再生促す物質解明
◆骨粗しょう症ラットで効果 京大グループ
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骨の再生を促す物質の働きを、京都大医学研究科の成富周教授らのグループが明らかにし、動物実験でめざましい効果を確認した。この物質を刺激して骨折の回復を早める薬を小野薬品工業(大阪市)が開発、臨床試験が行われている。国内には骨がもろくなる骨粗しょう症の患者が推定約一千万人といわれ、その予防や治療にも応用できそうだ。
この物質は、生理活性物質のプロスタグランジンE2(PGE2)が結ぴつく四つの受容体の一つで、EP4と呼ばれるたんぱく質。マウスのEP4の遺伝子を壊し、この受容体を作れなくすると、PGE2の作用による骨の形成がうまく進まないことがわかった。骨粗しょう症にしたラットに、EP4を刺激する薬を投与すると、三分の一に低下していた大腿骨内部の骨密度が約二か月後には、正常に戻り、骨組織の形や強度も健康な骨と変わらなくなった。同杜によると、EP4刺激薬の臨床試験で、副作用は見られていない。PGE2そのものも骨の形成を促すが、炎症を起こし、痛みが増すため治療薬には向いていなかった。
成果は米科学アカデミー紀要の四月号に発表。成宮教授は「EP4刺激薬は動物実験で従来の薬にはない劇的な効果が見られた。骨折の早期治療が可能になり、寝たきりも防止できそうだ」と話している。骨粗しょう症は、閉経後の女性や、寝たきりなどで運動不足の人に起こりやすい病気で、骨の密度が落ちてすき間が多くなり、容易に骨折してしまう。このほか同グループは、難病の潰瘍性大腸炎にもEP4刺激薬が有効なことを、マウスの実験で確認しているという。
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骨粗しょう症になって約70日たったラットの大腿骨の断面の比較。
右側は途中でEP4刺激薬を投与した場合(米科学アカデミー紀要から、成宮教授提供)
武藤徹一郎・財団法人癌研究会付属病院副院長の話
ステロイド剤投与が困難になった患者で手術を回避しうる場合があり、さらに半数以上の患者に効果があった点は評価できる。
ことば 潰瘍性大腸炎
15〜25歳での発症例が最も多い。年を経るにしたがって悪化し、手術を繰り返す患者もいる。全国の患者は1984年にぱ約9100人だったが、97年には約5万1000人と5倍以上に増えた。75年に難病に指定された。
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