毎日新聞朝刊 2002年8月20日
名古屋大病院 手術ミスで30歳代男性死亡
業過致死で捜査
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名古屋大医学部付属病院(名古屋市昭和区)は20日、30歳代の男性患者の手術中に、誤って腹腔(ふっくう)鏡の挿入器具で腹部の大動脈を傷つけて大量出血を起こし、男性が2日後の今月18日に死亡したと発表した。病院は「重大な医療事故」と認めたうえで20日、事故調査委員会を設置し、詳しい原因を調べている。病院から通報を受けた愛知県警昭和署は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査を始めた。
病院によると、男性は89年、原因不明の難病のかいよう性大腸炎を発症。薬や食事による治療を続けてきたが、先月下旬に入院。今月16日、大腸を摘出して回腸と肛門を直結する手術を行った。
手術は開腹せずに、腹部に直径約1センチの穴を2カ所開け、腹腔鏡と呼ばれるモニターカメラや手術器具を挿入して行う方法で、同日午前9時45分から、同病院消化器外科の医師3人が行った。同10時ごろ、40代の執刀医が二つ目の穴を開ける際、誤って挿入器具(トロッカー)の先で大動脈を刺した。すぐに開腹し、約11・6リットルの輸血を行うなど応急措置をしたが出血は止まらず、18日午前3時半ごろ死亡した。病理解剖の結果、死因は多臓器不全だった。
病院によると、執刀医は医師歴17年目。大腸手術は年間80〜90例実施し、腹腔鏡を使った同種の手術は過去25例、最近は月2例の頻度で行ってきた。
会見した二村雄次病院長らは遺族に謝罪し、「器具の不具合の可能性や薬物療法で血管がもろくなっていた状況もあるが、執刀医が器具を(大動脈に)当てたのは紛れもない事実。大動脈を傷つけるのは極めてまれで原因を徹底究明したい」と話した。 【山田大輔】
[毎日新聞8月20日] ( 2002-08-20-19:55 )
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