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NHK教育 「きょうの健康」
月〜金 午後7:10-7:25
2001・01・31 放送 |
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きょうの健康です。
毎月最後の放送は最新の医学トピックスをお送りしています。
今日ノテーマはは潰瘍性大腸炎の新しい治療法についてです。
潰瘍性大腸、原因も解っていない、また治療も難しいという事で厚生労働省の難病指定を受けているんですね。 |
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患者数も増えていて99年度で推定患者数6万人を越えました。
この潰瘍性大腸炎の新しい治療法を、今日はお伝えしていきます。
お話は兵庫医科大学病院 下山教授です。 |
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さてこの潰瘍性大腸炎、難病ということですが一体大腸でなにが起こる病気なんでしょうか?
大分良くなった正常の粘膜に近い患者さんの内視鏡です。(右)
正常では血管が透けて見えています。
それに対して炎症がひどくおきますと、このように(左)方々で出血を起します。白いところは潰瘍で、潰瘍が起きて出血します。
一旦治ってもまた繰り返すやっかいな病気です。 |
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大腸全体が潰瘍になってるんですか?
肛門からスグの直腸はほとんど全部の患者さんが冒されており、段々左側に広がっていき、とうとう最後には大腸全体が悪くなる患者さんもいます。大体1/3くらいです。一般的に広いほど症状は重いです。 |
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どういう症状が出るんでしょうか?
ほとんどの患者さんは血便と腹痛があります。全体が広く冒されると下痢になります。炎症が強いと熱が出ます。下血が続くと貧血になり。同時に、「食べたくない」と食欲不振になります。
これらが主な症状です。 |
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これらの症状はずーっと続いて行くんでしょうか?
症状は基本的に続くんですが、一回良くなってもすぐ又繰り返す再燃緩解型、一回だけで終わる初回発作型、半年以上も血便が治らない慢性持続型、最初の症状が全身的に重く手術が必要な急性電撃型があります。大学から社会人になる様な若年の発症が多く炎症も強いので社会生活が不便になりがちです。
原因は細菌や免疫・遺伝に関係してると言われていますが、はっきりしていません。 |
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これまで試みられてきた治療法をご紹介下さい。
食事は高蛋白高カロリーで、繊維分や刺激のある酒・カレーのような物はできるだけ避ける。薬物療法は基本的にステロイドホルモンが使われます、再燃を抑えるのにアミノサリチル酸剤をつづけて飲みます。どうしても効かない場合は最後は手術して大腸全部を取ります。
これが今までの治療法です。 |
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こうした治療の問題点は?
ステロイドが問題です。
副作用として顔がまるくなる・にきび・多毛などがあり、特別な合併症としてとして骨粗鬆症・糖尿病・眼病・血圧が高くなる等があります。
できるだけステロイドを早く切ることがこの病気に求められている治療法です。
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こういった状況の中で新しく出てきた新しい治療法の説明頂きます、「顆粒球吸着療法」とは…?
血液の中の顆粒白血球、それも、活性化された有害な白血球だけを選択的に取り除く療法です。
これは治療前の潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜の組織です。
小さなつぶつぶ全部が有害な顆粒白血球で、これが活性酸素をつくりラジカルで粘膜を壊すので、取り除きたいワケですね。 |
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取り除いた日から一週間程度はこういったふうにつぶつぶが完全に無くなっており、こうなると極めて早く粘膜が修復するというのがこの療法の特徴です。
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取り除くとは一体どういう考え方なんでしょう?
患者さんから血を採りまして体外循環させます、透析と同じようなイメージですね、そして顆粒球だけを選択的に取り除ききれいな血をまた戻してやるわけです。 |
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それでは治療の実際の様子をご覧頂きましょう。
腕の静脈から体外に取り出された血液は- |
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-毎分30ミリリットルの割合で- |
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-この筒状の顆粒球吸着機に運ばれます。 |
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装置の中には直径2ミリほどの特殊なビーズがおよそ3万個詰まっています。 |
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血液が装置を通るとこのように色が変化していきます。
この際、中のビーズの表面に活性化された顆粒球と単球だけが付着していくのです。 |
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電子顕微鏡でビーズの表面を見てみます。
これが付着した顆粒球です。
これを血液から取り除くことで大腸の炎症を抑えるのが新しい治療法の特徴です。
一回につき1時間かかり、一週間に1回、5週を1クールとして行います。大体3回目から効く人には効果が現れます。
体に影響とかは無いんでしょうか?
有害なものを選択的に取っているのでむしろ体には良いわけで、取った分の白血球はすぐプールからドンドン出てくるので白血球が減るという事はありません。
血液全体を対象にしていないで貧血を起す事も有りません。
副作用の面は非常に少ないです。
必要な赤血球とかは取り除かれないワケですね?
有害な顆粒球・白血球だけとります。
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治療の効果はどれくらい有るんでしょうか?
見て頂きますとすぐに解ると思います。
コチラ(左)が治療前です、白い部分が大きな潰瘍(黄色い線で囲んだ部分)があり、出血しているわけです。
5回終わりますと、このように粘膜がすけて血管も見えております(右)この様な状態になると緩解でもう退院しております。
この時点ではもうステロイドは抜いております。
ステロイドを早く抜けるのがこの治療法の特徴です。
ステロイドを抜けない患者でも抜く事ができます。 |
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効果を数字で表わしてみましょう。
保険適応になっているのは重症例・難治性になりますが、従来のステロイド療法ですと20-30パーセントなのですが、顆粒球除去療法ではいずれも50パーセントを越す有効例が出ており、副作用の方も非常に少ないのがセールスポイントになります。
血液を体外循環させるのでどうしても一部の患者さん、血圧の低い方に多いのですが、目まい・吐き気が起きたりします。
また、血液凝固阻止剤に対するアレルギーもあります。
この治療法はどこで受けられるんですか?
有効な治療法なので2000年4月から保険適応になって、全国どこでも受けられます。
実際にやっている病院は360を越えていますが、できれば透析などもやっている経験豊富な病院の方が安全です。
消化器内科の専門医が窓口になるんですね。 |
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残された課題はどういうものがありますか?
非常に良く効き、重症であっても血便がすぐに減るんですが、再発というのが残っておりまして、再発再燃をどう防いで行くかがこれからの研究になります。
やはり再発は避けられないものなんですか?
再発はやはり起きますので、まぁ一部は効きますけど再発を防止するまでには至らないので、なお検討いたします。
なるほど、その辺が今後の課題になるわけですね。
本日はどうもありがとうございました。
ちゃかちゃんちゃらんちゃちゃんちゃんちゃら〜ん♪ |